シャウエッセンは1本あたり2割の値上げ——量を減らす値上げで、ファンを失わないために

日本ハムがシャウエッセンを6本から5本に減らしました。価格は据え置きで、1gあたり9%、顧客が数える1本あたりでは20%の値上げです。SNSの否定的な声を整理し、量を減らす値上げで気をつけるべきことと、うまく進める方法を解説します。
高橋嘉尋 2026.10.08
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日本ハムは10月5日、「シャウエッセン」の内容量を減らすと発表しました。1パックは117gから107gへ。本数は6本から5本になります。価格は702円(税込・2パック)のままです。

日本ハムは同時に、1本あたりの重さを増やし、「肉感」と食べ応えを高めたと説明しました。新聞の全面広告には「時代に負けてたまるか。」というコピーが載りました。

SNSでは、否定的な声が大半を占めています。この記事は、日本ハムの判断を批判するものではありません。どんな声が出ているのかを整理し、量を減らす値上げで何に気をつけるべきかを考えます。

この記事の結論

・今回の改定は、1gあたりでは9%、顧客が数える1本あたりでは20%の値上げ

・「価値を足してから値上げ」は、かえって反発を強めやすい。素直に小幅な値上げをしたほうが、実はうまくいく

・量を変えて値上げするなら、支払意欲が高い顧客層の使い方に合わせる。良い切り口の見つけ方を、私たちが支援した事例とともに会員限定パートで解説

何が変わったのか

改定前

  • 内容量(2パック):234g

  • 本数(2パック):12本

  • 1本の重さ:19.5g

  • 価格(税込):702円

改定後

  • 内容量(2パック):214g

  • 本数(2パック):10本

  • 1本の重さ:21.4g

  • 価格(税込):702円

1本の重さは平均で約1割増えました。そのぶん本数を減らし、全体の量は20g少なくなっています。

1gでは9%、1本では20%

価格を量で割り直してみます。

  • 1gあたり:3.00円 → 3.28円(+9.3%)

  • 1本あたり:58.5円 → 70.2円(+20.0%)

「1パック10g減」と聞くと、1割に満たない小さな改定に見えます。グラムで計算すれば、実際に9%です。

しかし、ソーセージを食べる人が数えているのは、グラムではなく本数です。「今日は何本焼くか」「1人何本か」で考えます。顧客の目には、同じ702円で買える本数が12本から10本に減った、つまり1本が2割高くなったと映ります。

企業がグラムで「9%」と見積もった値上げが、顧客には「20%」として届いているわけです。値上げの幅は、企業が管理する単位ではなく、顧客が数える単位で見積もらないと、顧客の受け止め方を読み違えます。

SNSではどんな声が出ているか

報道やSNSのまとめを見ると、声はおおよそ次の3つに分かれます。

1. コピーと中身が合っていない。「時代に負けてたまるか」と言いながら量は減っている、という指摘です。「実質値上げと言ってほしい」という声もあります

2. 5本では分けにくい。6本なら2人でも3人でも割り切れました。5本はどちらでも割り切れません。家族で食べる家庭からの声です

3. それなら素直に値上げしてほしい。量を減らすより、価格を上げてくれたほうが納得できる、という声です

一方で、実際に食べた人からは「1本がリッチになった」「おいしい」という声も少数ながら出ています。

1つ目の「伝え方」については、すでに多くの解説が出ています。ここで注目したいのは3つ目と2つ目です。

「価値を足してから値上げ」は、火に油を注ぎやすい

今回の改定は、量を減らすことと、1本を重くして「肉感」を高めることをセットにしています。値上げに付加価値を添えて、受け入れてもらおうとする形です。

値上げの相談を受けていると、付加価値を増やしてから値上げすることにこだわる会社がとても多いと感じます。価値を足せば、値上げに納得してもらえるはずだ、という考え方です。

しかし、顧客の目線で見ると、そうはなりません。

  • 「その価値はいらないから、値段を据え置いてほしい」と受け止められる。足した価値は、企業が付けたい価値であって、顧客が払いたい価値とは限りません

  • 値上げの言い訳に見えて、かえって反発を強める。3つ目の「それなら素直に値上げしてほしい」は、まさにこの反応です

中途半端に価値を足してから値上げするより、素直に、シンプルに、小幅な値上げをしたほうが、実はうまくいくことが多くあります。10%前後の値上げであれば、価値を足さなくても通ることがほとんどです。

基本の順序は逆です。値上げで利益が増えてから、その利益で付加価値をどう高めていくかを考える。値上げのために無理に価値を足そうとして、顧客が求めていない改定をするのは避けたほうがよいでしょう。

「5本は分けにくい」は、使い方が変わることへの不満

2つ目の「5本は分けにくい」は、値上げの額への不満ではありません。家族で分けて食べる、という使い方そのものが変わってしまうことへの不満です。

前回の記事では、ChatGPTの料金を「利用の最小単位」で割り直しました。顧客が商品を数える単位は、価格を考えるうえでの基準になります。今回、その単位である本数が変わったことで、使い方ごと影響を受けた顧客層がいたわけです。

とはいえ、小売との交渉などで、価格をそのまま上げにくい事情を抱える企業も多いはずです。量を変えて値上げするなら、どうやって良い値上げの切り口を見つければよいのか。その方法を解説します。

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続きは、2288文字あります。
  • 量を減らす値上げは、全員に同じようには効かない
  • 量を減らすことが、そのまま価値になった事例
  • 2つの違いは、誰の使い方に合わせたか
  • 自社で量を減らす値上げを検討するときの手順
  • まとめ

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