京都市の収入は年14億円増える——二条城 二重価格の狙いとは?
10月1日、京都市の松井孝治市長が、世界遺産・二条城の観覧料に「二重価格」を導入する方針を表明しました。現在は入城と二の丸御殿の観覧を合わせて1,300円ですが、導入後は京都市民が1,000円、市民以外は2,000円になります。2027年度中の導入を目指し、11月議会に条例改正案が出される予定です。
報道では「市民優先」「オーバーツーリズム対策」という言葉が並びました。市民には値下げ、観光客には値上げ。一見すると、市民に配慮した料金改定に見えます。
しかし、数字を置いてみると見え方が変わります。来場者が減らなければ、京都市の観覧料収入は年約14億円増える計算です。プライシングを専門とする立場から、この二重価格で実際に誰がいくら払い、どれだけの収入が生まれるのかを解剖します。
この記事の結論
・来場者が減らなければ、観覧料収入は年約26.9億円から約41.0億円へ。年約14億円の増収になる
・値下げされる市民は来場者の約2%で、値下げの費用は年約1,200万円。実態は、残り98%への54%の値上げ
・区分がうまくいくかは、支払意欲の差と、顧客が区分を偽れないかの2条件で決まる。自社で真似るなら、区分より先に支払意欲の差を確かめる(会員限定パートで解説)
何が変わるのか
現在
京都市民:1,300円
市民以外:1,300円
導入後
京都市民:1,000円(-23%)
市民以外:2,000円(+54%)
区分は国籍ではなく、京都市民かどうかです。大阪や東京から来た日本人も、2,000円を払うことになります。
値下げされるのは、来場者の2%だけ
二条城の来場者は、2025年度で約207万人。市が昨秋に一定期間行った調査では、そのうち市民は約2%でした。
来場者数が変わらないと仮定して、収入を試算してみます。

現在:207万人 × 1,300円 = 約26.9億円
導入後:市民以外 約203万人 × 2,000円 + 市民 約4万人 × 1,000円 = 約41.0億円
差は年約14億円です。二の丸御殿の修繕には総額約200億円がかかる見通しで、増収分だけで賄うなら約14年分にあたります。
一方、市民を300円値下げする費用は、約4万人 × 300円で年約1,200万円。増収の1%にも満たない額です。
つまり、この料金改定の実態は「市民への値下げ」ではありません。来場者の98%に対する、54%の値上げです。市民への値下げは、値上げを通すための添え物と言ってよい規模でしょう。
54%の値上げは通るのか
54%は大きな値上げです。日常の商品であれば、顧客が離れる水準と考えるのが普通でしょう。
しかし、二条城の市外客にとって、観覧料は京都旅行の総額のごく一部です。交通費と宿泊費に数万円をかけて来た顧客にとって、700円の差で二条城を見送るとは考えにくい。代わりの効かない世界遺産であることも、値上げを通しやすくしています。
そしてもう1点、見逃せない構造があります。この料金を決めるのは京都市議会、つまり市民の代表です。値上げを負担するのは、議会に代表を送っていない市外客。値下げの恩恵を受けるのは、議会に代表を送っている市民。結果として、値上げに反対する声が議会から上がりにくい構造になっています。
なぜ「居住地」だったのか
前回の記事では、サブウェイがオリーブやピクルスだけを有料にした理由を取り上げました。あのときの切り口は「アクセント野菜を足すかどうか」でした。今回、京都市が選んだ切り口は「居住地」です。
ここで考えたいのは、居住地という区分が、どんな条件のもとでうまくいくのかです。
そして、自社の顧客を「高く払える顧客層」と「そうでない顧客層」に分けるとしたら、何で分ければよいのか。
では、どうやって高く払う顧客層を切り分ける「切り口」を見つけていくのかを解説します。
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- 切り口には、2つの条件がある
- 条件1は、箱ひげ図で確かめる
- 条件2は、支払意欲が高いときにだけ成り立つ
- 価格の差は、顧客層ごとの推計で決める
- 区分は、真似せずに分析してから決める
- まとめ
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