話題の“CoCo壱”値上げは失敗だったのか?
CoCo壱が24年8月に行った値上げが、世間の注目を集めています。
2025年は年間を通じて、CoCo壱で「客離れ」と書かれた記事が世の中に溢れました。
そんな私も25年8月に記事を書かせていただきましたが、Yahoo!ニューストップへ転載。3000コメントを超える大バズを記録し、世間はこんなにもCoCo壱の値上げに関心が高いのかと驚いたものです。

一方で、値上げにより、売上は増加しているという意見も見られます。実際に、IRでは売上が増加していることがわかります。
これだけを見ると、この値上げは失敗ではなく、成功だったのではないか...?
今回は、話題の値上げから1年半が経過した今、実際の結果を見ながら、値上げは成功だったのか、失敗だったのか、考察してみようと思います。
そもそもCoCo壱は値上げが上手な企業といえる
実はCoCo壱は値上げが上手な企業でした。下図のように、定期的に小刻みな値上げを繰り返し、客単価だけでなく、1店舗あたりの売上を着実に伸ばしてきた歴史があります。
以下のように、2014年〜2019年までの6年間、1年に1回の頻度で、値上げを実施しています。
・2014年4月(ポークカレー、ビーフカレー、トッピングなど全体的な値上げ)
・2015年3月(ロースカツカレー、チーズカレー、一部トッピングなどの値上げ)
・2016年12月(ポークカレー、各種カツカレーなど全体的な値上げ)
・2018年12月(ビーフカレーの値上げ)
・2019年3月(ポークカレー、各種トッピングなどの値上げ)
・2019年10月(消費税率引き上げに伴う全体的な値上げ)
そして、この値上げが功を奏して、客単価だけでなく、1店舗あたりの売上を着実に伸ばしていることがわかります。(過去のデータに関しては、Funda Naviさんが丁寧にまとめてくださっているので、以下で引用します。)

これらのことから、CoCo壱は非常に値上げが上手な企業であると言えます。ゆえに、私はCoCo壱の値上げに関しては常に注目してウォッチしていました。当然、直近の値上げ(24年8月)も上手くいくのだろう。そう思っていました。しかし、今回の値上げに関しては、これまでとは何かが決定的に違う。そんな予感がしたのです・・・
24年8月の値上げの結果はどうだったのか
24年8月の値上げは、実際のところどうだったのか。「1店舗あたりの来客数」「1店舗あたりの売上」の2つの観点から見ていきましょう。
まず、「月次客単価」と「1店舗あたりの来客数」を見てみましょう。値上げにより、「月次客単価」は増加していますが、同時に「1店舗あたりの来客数」が減ってしまうという事態を招いています。前年同月比で10ポイント以上も減少している月もありますから、如実に客数減少していると捉えることができます。

過去の有価証券報告書をもとに当社が作成
しかし、この時点で、失敗と決めつけるのはまだ早いでしょう。
というのも、「売上」=「単価」×「数量」ですから、単価が上がっているならば、数量が減ったとしても、売上が増えることがありえる。つまり、あえて数量(客数)を減らして、売上を引き上げる狙いがあったとするならば、成功と結論づけられる場合があるからです。しかも、数量が減って、売上が増えるのであれば、利益はさらに増えますよね(実は、美味しい)。特に、マーケットシェアを十分に取り、数量増による成長が大きく見込めない企業がよく図る戦略です。

過去の有価証券報告書をもとに当社が作成
実際、値上げから1年間の間は、客単価の上昇の影響もあり、「1店舗あたりの売上」を伸ばすことに成功しています。しかし、24年8月の値上げから1年が経過しようとした頃、前年同月比割れ(売上減少)に傾きました。前述した客数の減少を鑑みても、売上の減少傾向は続くと推測されます。
このように、データだけをピュアに見つめると、今回の値上げは一見「失敗」のように思えます。しかし、もう少し広い視野で、海外事業も含めた「グループ全体」の視点で捉え直してみると、また違った景色が見えてきます。
実は全体の売上自体は増加傾向にあり、特に海外事業は着実な成長を遂げている・・・
ここで、現在の日本市場が置かれた状況を冷静に整理してみましょう。 ご存知の通り、日本はこれから人口が減少していく国です。つまり、「胃袋の数」そのものが物理的に減っていくわけですから、国内市場における今後の伸び代はどうしてもありません。
そんな中で、今回の客数減少を捉え直してみると、ある仮説が浮かび上がってきます。 客数が減少すれば、当然ながら店舗運営にかかるオペレーションコストは下がります。昨今は原材料の高騰が止まらない状況ですから、たとえ客数や売上が多少減ったとしても、確実に「粗利をプラスにする」という明確な意図があったのだとしたらどうでしょうか。そう、この状況を「戦略的に引き起こしている」という見方も十分にできるわけです。
つまり、国内事業においてはこれ以上の「シェア拡大」を追うのをやめ、確実に利益を回収する「利確路線」へと舵を切る。そして、そこで得た利益を原資として、これからの成長領域である「海外事業への投資」を一気に加速させる。そんな戦略的狙いが背景にあった可能性も捨てきれないのです・・・
ここで、IRから「ほ〜ら、粗利が伸びているでしょ??」って言えればカッコよかったのですが、残念ながら国内事業単体での粗利は非公開となっていました。残念。
そのため、ここまで引っ張って大変恐縮ですが、話題の“CoCo壱”値上げは成功だったのか、失敗だったのか、私には分かりかねます。今度からは、断定できるネタを取り上げたいものです(泣)
整理をすると、
・値上げにより、明確に客離れは起こっている。
・売上も一時的には増加したが、減少傾向に転じているが、まだ軽微。引き続き減少傾向は続くと見込まれる。
・通常のケースであれば、失敗と断定できる状況だが、原材料高騰/人件費高騰/人口減少を鑑みると、国内事業のコストを下げ、粗利を増加させる(そうして得られた利益を海外事業に投資する)狙いがあった可能性も拭いきれない。
・国内事業の粗利が増加してたら、今回の値上げも成功だったと言えるが、粗利がポジティブな改善を見せていなかった場合が、失敗と言える。
ということになります。なので、国内事業の粗利次第です。ぜひ、情報を持っている方は教えてください。
超えてはならない「価格の閾値」
値上げの記事でよく書かれている「壁」とは何か、みなさんはご存知でしょうか。
例えば、ラーメン1,000円の壁という言葉は数年前はよく耳にしたかと思います。これは、ラーメン業界では1杯1,000円以上にすることができない(1,000円を超えた途端、客離れが起きてしまう)という意味です。実際のところラーメンには1,000円の壁があるのかは、また別の機会にお話しするとして、この「壁」という考え方は非常に正しい。私たちのような価格の専門家は、この「壁」を「価格の閾値」と呼んでいます。
一般論として、価格は上がるにつれて、徐々に顧客離れ(減少)が起こるという説があります。社会科の教科書で見る需要曲線が緩やかなカーブを描いているのが要因かなと思いますが、実際はそんな緩やかな顧客離れは起こりません。ある価格を超えるまで、いくら値上げをしても顧客離れは起こらず、ある価格を超えた瞬間、一気に顧客離れが起こります。本当、10%とか、30%とか、恐ろしい数の顧客が減少します。このある価格を、世間的には壁と予備、専門家は「価格の閾値」と呼んでいるのです。
この知識を頭に入れて、もう一度、この記事を初めから読んでみてください(お手間をおかけしてすみません・・・)。解説を続けますね。
そうです、CoCo壱のこれまでの値上げは「価格の閾値」を超えてこなかった。しかし、客単価1,200円を超えた際、如実に客数が減少しました。客単価1,200円のところに、「価格の閾値」があったということです。値上げは怖いですね・・・
この「価格の閾値」の見つけ方や、上げていく方法(も、ちゃんとあります!)は、また今度お話ししようかなと思います。気長にお待ちくださいね💦
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